陸の上で季節が変わるとき、海の中でも同じように季節が変わっています。ただし、少し遅れて。
海水は空気よりも温まりにくく、冷めにくい性質があります。だから気温が下がりはじめても、海水温はしばらく高いままです。海の秋は、陸の秋より遅れてやってきます。
水温が下がると、貝は楽になる
ほたては冷たい海に適応した貝です。夏の高水温は、ほたてにとって消耗の季節でした。呼吸のために使うエネルギーが増える一方で、食べる量は増えない。差し引きすると、蓄えを取り崩す時期になります。
秋になり水温が下がってくると、この関係が逆転していきます。
| 季節 | 使うエネルギー | 蓄えの動き |
|---|---|---|
| 夏 | 多い | 減りやすい |
| 秋 | 落ち着く | 溜めやすくなる |
| 冬 | 少ない | 蓄えが残る |
貝にとって秋は、夏に減らした分を取り戻す時間です。
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海の層が混ざる季節
夏のあいだ、海は上と下で水温が分かれた状態になります。表層は日射で暖まり、深いところは冷たいまま。この境目があるあいだ、上下の水はあまり混ざりません。
秋が深まって表層が冷えてくると、この境目がぼやけ、上下の水が混ざりやすくなります。深いところに沈んでいた栄養分が表層に戻ってくると、植物プランクトンが増えやすい条件が整います。
ほたてにとっては、餌が増える方向の変化です。水温が下がって体が楽になり、同時に餌も増える。秋から冬にかけて身が充実していくと言われるのは、こうした条件が重なるからです。
海の底で、季節は静かに進む
海の中の変化は、陸のように目に見えません。紅葉も落葉もありません。けれど水温計の数字は着実に下がり、プランクトンの量は変わり、貝の体の中では蓄えの向きが変わっています。
漁師が毎日海に出て水温を測るのは、この見えない季節の進み方を確かめるためです。数字の並びから、今年の海がどんな年になりそうかを読み取っていきます。
食卓から見た秋
家庭の食卓でも、秋は献立が変わる時期です。冷たい料理から温かい料理へ。さっぱりした味付けから、しっかりした味付けへ。
ほたては、その両方に合う素材です。冷たい和え物にもできますし、鍋にもシチューにも入ります。海の季節と食卓の季節が、そこでつながります。
まとめ
秋の海では、水温が下がり、層が混ざり、餌が増えます。ほたてにとっては、夏の消耗から立ち直る季節です。目には見えませんが、確かに海の中でも秋が進んでいます。



