まぐろやかつおの身は赤く、ほたての貝柱は白い。同じ「筋肉」なのに、どうしてこれほど色が違うのでしょうか。答えは、その生き物が体をどう使って生きているかにあります。
色を決めているのは「持久力の道具」
筋肉の赤い色は、酸素を蓄えたり運んだりする色素タンパク質によるものです。長い距離を泳ぎ続ける魚は、酸素を絶やさず筋肉に届けなければなりません。そのための仕組みが充実しているほど、身は赤く見えます。
いっぽうほたては、一日の大半を海底や養殖カゴの中でじっとして過ごします。持久走を続ける必要がないため、酸素を蓄える仕組みに頼らない筋肉が発達しました。その結果が、あの白く半透明な貝柱です。
貝柱は一つではなく、二つの部分でできている
ほたての貝柱をよく見ると、大きな円柱状の部分の脇に、少し質感の違う小さな塊がついていることがあります。これは飾りではなく、役割の異なる筋肉です。
| 部分 | 役割 | 動きの特徴 |
|---|---|---|
| 大きい方(横紋筋) | 殻を素早くパクパク動かす | 瞬発的・短時間 |
| 小さい方(平滑筋) | 殻を閉じたまま保つ | 持続的・省エネ |
ほたては危険を感じると殻を勢いよく開閉し、噴き出す水の勢いで泳いで逃げます。これを担うのが大きい方の筋肉。対して、殻を長時間閉じ続けて身を守るのが小さい方の筋肉です。力を出し続けるのにほとんどエネルギーを使わない、たいへん燃費のよい仕組みだと言われています。
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食感の違いとして、口の中でも分かる
この二種類の筋肉は、食べたときの印象も少し違います。大きい方はほろりとほぐれる繊維感があり、小さい方はやや弾力があってコリッとした歯ごたえを感じます。同じ一粒の中に二つの食感が同居しているわけです。
刺身や蒸しほたてを食べるときに、あえて意識して噛み分けてみると面白いかもしれません。「泳ぐための筋肉」と「守るための筋肉」を、そのまま味わっていることになります。
白い筋肉だからこそのやわらかさ
赤身の魚は加熱すると身が締まって硬くなりやすいのに対し、ほたての貝柱は火の通し方さえ間違えなければ、ふっくらとやわらかく仕上がります。繊維が縦に走っているため、ほぐれ方も素直です。
- 加熱しすぎない … 縮んで水分が抜けると硬くなる
- 繊維に沿ってほぐす … 口当たりがなめらかになる
- 厚みがある場合は横に切る … 繊維が短くなり食べやすい
まとめ
貝柱の白さは、ほたてが「ふだんはじっとしていて、いざというときだけ全力で泳ぐ」という暮らし方を選んだ結果です。色や食感には、その生き物の生き方が刻まれています。次に貝柱を口にするとき、ほんの少しだけその背景を思い出していただけたら嬉しいです。


